8月にパタヤのホテルが注目すべき市場とは

2025年、タイ観光業は新たな転機を迎えようとしています。
そのひとつが「中東・アフリカ市場からの誘致強化」です。特に中東諸国は、パタヤのホテルにとって新しい可能性を秘めた市場といえるでしょう。
今回は、タイ国政府観光庁(TAT)の最新レポートや地域情勢、文化的背景を踏まえながら、パタヤにおける中東諸国からの集客戦略について考察します。
中東市場の現状と課題
TATドバイ事務所によると、2025年の中東・アフリカ市場からの訪タイ者数目標は100万人。7月末時点で約49万人に留まり、目標達成は簡単ではない状況です。※2025年8月5日のバンコクポストより
その背景には以下のような要因があります:
- 6月に発生したイスラエルとイランの12日間の戦争による地政学的不安
- 特に家族連れや初めての旅行者が旅行を控える傾向
- 成長率も前年比でわずか2.22%増にとどまる
弊社のホテルも6、7月は中東のお客様のご予約が大量キャンセルが発生した為、かなり苦戦を強いられました。
タイ全体の具体的な損失額に関しては不明ですが、中東からの旅行者は1人あたり1日平均9,600バーツ以上、1回の旅行で10万バーツ超を消費するとされており、1万人分のキャンセルだけでも10億バーツ(約40億円)以上の経済損失につながる可能性があります
ただし、8月の夏季休暇を契機とした旅行需要の回復が期待されています。
8月は「中東のハイシーズン」
多くの中東諸国では、6月中旬から8月末までが学校の夏休みです。企業でもこの期間に長期休暇を取得する文化があり、家族で海外旅行に出かける層が急増します。
特に「イード祭り(Eid)」というイスラム最大の祝祭がある年には、数日から1週間以上の公的休暇が発生し、旅行需要はピークを迎えます。
中東旅行者の特徴とニーズ
中東市場での主要顧客層は以下のとおりです:
- 家族連れ・ミレニアル世代が中心
- 平均消費額:1日あたり9,600バーツ超/1回の旅行で10万バーツ以上
- 宿泊施設:5つ星やラグジュアリーヴィラを選ぶ傾向
- 観光目的:ショッピング、ビーチ、自然、医療・ウェルネスツーリズム
また、以下のような要素が選定の決め手になります:
- ハラール対応食事
- 礼拝スペース(モスク)
- プライベートプール付きヴィラ
- VIP空港送迎などのパーソナルサービス
パタヤが中東市場に向いている理由
パタヤはこれまで欧米やアジア圏の観光客を中心に成長してきましたが、中東市場との親和性も非常に高いといえます。
✅ 1. ラグジュアリーヴィラ・ホテルが豊富
パタヤにはプール付きのプライベートヴィラや高級ホテルが多数あり、プライバシーを重視する中東旅行者にマッチしています。
✅ 2. 医療・ウェルネスツーリズムとの相性
ビューティー・スパ・リハビリ施設が充実しており、美容目的や治療目的の旅行者の受け入れにも適しています。
✅ 3. 空港アクセスが良好
スワンナプーム空港やウタパオ空港からのアクセスがスムーズで、中東からの直行便(例:アブダビ発クラビ・チェンマイ便)を活かした乗り継ぎも可能です。
今後の動きとチャンス
TATは2025年下半期に以下のようなプロモーションを予定しています:
- 中東トレードミート in バンコク・サムイ(8月)
- クウェート・バーレーンでのラグジュアリーロードショー(11月)
- 2026年:Wellness Escapes in Amazing Thailand(重点市場:サウジ・オマーン)
今後、モロッコ市場の急成長も期待されており、ビザ要件緩和によって新婚旅行層の需要が増加しています。
パタヤのホテルが今すぐできる対応策
中東からの観光客を効果的に取り込むには、以下の準備が有効です:
- ✅ ウェブサイトやSNSのアラビア語対応
- ✅ ハラール料理対応の明示
- ✅ 礼拝スペースやモスク情報の提供
- ✅ プライバシー重視の部屋タイプ(ヴィラ、スイート)の強調
- ✅ AIチャットボット等を活用した旅行者対応の自動化
まとめ
パタヤのホテルにとって、中東市場はまだ開拓の余地が大きく、今こそ積極的に取り組むべきターゲット層です。
地政学的なリスクはあるものの、旅行者1人あたりの消費額の高さや、高級志向、夏の旅行需要の集中を踏まえると、2025年後半〜2026年にかけての戦略的強化が重要といえるでしょう。
コメント