今さら聞けないEEC(東部経済回廊)完全ガイド

— はじめての人でも5分で全体像がつかめる —

この記事のねらい

「EECって聞くけど、結局なに?」という方向けに、**東部経済回廊(Eastern Economic Corridor: EEC)**の基本をやさしく整理しました。位置・目的・優遇策・対象産業・体制まで、投資やビジネス検討に必要な“ちょうど良い深さ”で解説します。


EECとは?ひとことで

タイの国家的経済開発プロジェクトで、
チョンブリー県・ラヨーン県・チャチューンサオ県にまたがる地域を重点的に高度化・産業集積する取り組みです。狙いは、国際競争力の強化と持続的成長。ハイテク産業の誘致、交通・物流インフラの高度化、投資優遇、環境配慮を一体で推進します。

どこにある?

  • 対象県:チョンブリー/ラヨーン/チャチューンサオ
  • バンコク大都市圏と接続しやすく、港・空港・幹線鉄道の拠点性が高いのが特徴です。

なぜいまEECが重要なのか

  • 産業の高度化:次世代自動車やデジタル、航空、バイオなど成長分野へ軸足を移すため
  • インフラの近代化:空港・港湾・高速鉄道・公益事業などを面的にアップグレード
  • 投資環境の最適化:税制優遇やワンストップ手続きでスピードと確実性を担保
  • 生活の質向上:産業発展と同時に、地域の暮らし・環境の質を引き上げる

目標(ゴール)をざっくり整理

  1. 国家競争力の強化
    高度技術産業の集積で、アセアン有数の経済圏へ。
  2. インフラ整備の高度化
    交通・物流・公益・通信を連結・効率化してコストと時間を削減。
  3. 戦略産業の振興
    重点分野に投資を呼び込み、産業構造を高付加価値へ転換。
  4. 生活の質向上
    経済と社会・環境の質を両立させ、地域住民の厚生を高める。
  5. 投資環境の創出
    ワンストップサービス、法整備、税制優遇で“やりやすさ”を最大化。
  6. 持続可能な開発
    SEA(戦略的環境アセスメント)/**EIA(環境影響評価)**を義務付け、環境と共生。

どんな産業を育てるの?(ターゲット産業)

高付加価値・将来性のある分野が中心です。

  • 次世代自動車(EVなど)
  • スマートエレクトロニクス
  • 医療ハブ/メディカル&ウェルネスツーリズム
  • 航空産業
  • デジタル産業
  • バイオテクノロジー
  • 加えて、食品加工・ロボット・高度農業・バイオ燃料・環境配慮型ケミカル・防衛関連 なども対象に含まれます。

実際に何を整備するの?(インフラ&制度)

ハード面(例)

  • 空港・港湾・高速鉄道など、製造・観光・MRO(整備)を支える基盤
  • 物流・通信・公益事業の高度化による、安定供給と低コスト化

ソフト面(制度・運用)

  • ワンストップサービス(One Stop Service)
    許認可・各種手続きを一元化し、速い・分かりやすい・確実を実現。
  • 税制優遇・関税優遇
    企業所得税の免除・減税、機械・原材料の輸入関税免除など。
  • 土地利用の特例
    事業に必要な所有・賃借のしやすさを高める仕組み。
  • ビザ・労働許可の迅速化
    外国人専門人材の受け入れをスムーズに。
  • **東部経済回廊法(EEC Act B.E. 2561/2018)**に基づくルール整備
    投資促進、土地利用、手続きの透明性・予見可能性を確保。
  • EEC開発基金
    インフラ・人材育成など優先プロジェクトに資金支援。

誰が運営しているの?(ガバナンス)

  • 国家東部経済回廊政策委員会
    首相が委員長。副首相や財務・外務・観光・交通・産業・デジタル・エネルギー・環境などの各大臣が参加。
    役割:政策策定、計画承認、各省庁との調整、進捗監督、課題解決。
  • EEC事務局(EEC Office)
    上記委員会の方針に沿って実行部隊として投資家支援・計画実施・関係機関連携を担当。

投資家・事業者のメリット(例)

  • スピード:ワンストップ手続きで意思決定から稼働までが早い
  • コスト:税制・関税優遇、物流効率化で総コストを抑制
  • 人材:重点産業向けの教育・訓練プログラムで即戦力を確保
  • 拠点性:空港・港湾・鉄道の結節点に近く、輸出入・観光・MROに有利
  • 予見可能性:EEC法に基づく制度設計で、中長期の計画が立てやすい

環境と社会への配慮

EECでは、SEA/EIAの実施が義務
計画段階から環境・社会影響を精査し、緩和策を組み込むことで、**“成長と持続可能性の両立”**をめざします。


こんな人・企業に向いています

  • 製造・テック企業:EV、電子、デジタル、バイオ等のグロース投資
  • 航空・物流:MROやハブ型物流の最適立地を探す企業
  • ヘルスケア・観光:医療・ウェルネス観光の複合開発
  • 人材・教育:産学連携・職業訓練のスキームづくり
  • サプライヤー:重点産業の**周辺需要(部材・装置・サービス)**を狙う

よくある誤解と正しい理解

  • 誤解①:工業団地の拡張でしょ?
    産業高度化+インフラ+人材+制度+環境を包括した国家プロジェクトです。
  • 誤解②:外資だけ優遇される
    → 国内外の投資を対象に、明確な要件に沿ってインセンティブを付与。
  • 誤解③:環境は二の次
    SEA/EIAが義務。計画段階から環境・社会配慮を組み込む設計です。

はじめ方チェックリスト

  1. 対象産業との適合性:自社の技術・製品がターゲット産業に合致するか
  2. サプライチェーン設計:港・空港・鉄道と拠点配置の相性を検証
  3. 優遇適用の要件確認:税・関税・用地・人材スキームの適格性を確認
  4. 手続きフローの把握ワンストップサービスでの必要書類・期間・条件
  5. ESG要件の準備SEA/EIAに関わる体制・データ・パートナー整備
  6. 人材戦略:現地採用・研修・専門家ビザの計画
  7. リスク評価:政策要件の変更余地、為替・金利、供給網の冗長化

用語ミニ解説

  • EEC(Eastern Economic Corridor):東部経済回廊。チョンブリー・ラヨーン・チャチューンサオの3県を核にした国家開発プロジェクト。
  • OSS(One Stop Service):投資・許認可手続きの一元窓口。
  • SEA / EIA:戦略的環境アセスメント/環境影響評価。計画・事業の段階で環境・社会影響を評価し、回避・低減策を講じる枠組み。
  • EEC Act(B.E.2561/2018):EECの法的根拠となる法律。

まとめ:EECをひとことで

「産業の未来をつくる“場所”であり“仕組み”」
EECは、拠点性の高い3県にハードとソフトを同時投入し、高度産業×インフラ×人材×環境をパッケージで前進させる国家プロジェクトです。投資家・事業者にとっては、「スピード・コスト・予見可能性」の面で大きな優位性が期待できます。


参考Q&A(超要約)

  • 地域の名前は?東部経済回廊(EEC)
  • いくつの県で構成?3県(チョンブリー/ラヨーン/チャチューンサオ)
  • 主な目標は?競争力強化、インフラ高度化、産業振興、生活の質向上、投資環境整備、持続可能性の確保

出典

出典(PDF):https://www.doe.go.th/prd/assets/upload/files/bkk_th/0d8a0e6aecaf8a3f72b3209f54b8dc4e.pdf

このPDFの発行主体(どこの部署?)

  • **タイ労働省(Ministry of Labour)**の外局である
    **雇用局(Department of Employment、略称 DOE / タイ語:กรมการจัดหางาน)**が公開している資料です。
    雇用局は、国内の雇用行政・労働市場情報、外国人就労の手続(ワークパーミット等)を所掌する機関で、労働省の所管下に置かれています。กระทรวงแรงงานdoe.go.th+1
  • URLパスの/bkk_th/は、バンコク(BKK)関連の雇用局文書に使われるディレクトリで、同ディレクトリ配下の他文書でも**「バンコク雇用オフィス(สำนักงานจัดหางานกรุงเทพมหานคร)」**に関する案内が多数確認できます。今回のPDFも同系統の配置です。doe.go.th+2doe.go.th+2

補足:雇用局(DOE)が労働省の“配下機関”であることは、労働省公式サイトの「หน่วยงานในสังกัด(所管機関)」一覧にも明記されています。กระทรวงแรงงาน

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