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この記事のねらい
「EECって聞くけど、結局なに?」という方向けに、**東部経済回廊(Eastern Economic Corridor: EEC)**の基本をやさしく整理しました。位置・目的・優遇策・対象産業・体制まで、投資やビジネス検討に必要な“ちょうど良い深さ”で解説します。
EECとは?ひとことで
タイの国家的経済開発プロジェクトで、
チョンブリー県・ラヨーン県・チャチューンサオ県にまたがる地域を重点的に高度化・産業集積する取り組みです。狙いは、国際競争力の強化と持続的成長。ハイテク産業の誘致、交通・物流インフラの高度化、投資優遇、環境配慮を一体で推進します。
どこにある?
- 対象県:チョンブリー/ラヨーン/チャチューンサオ
- バンコク大都市圏と接続しやすく、港・空港・幹線鉄道の拠点性が高いのが特徴です。
なぜいまEECが重要なのか
- 産業の高度化:次世代自動車やデジタル、航空、バイオなど成長分野へ軸足を移すため
- インフラの近代化:空港・港湾・高速鉄道・公益事業などを面的にアップグレード
- 投資環境の最適化:税制優遇やワンストップ手続きでスピードと確実性を担保
- 生活の質向上:産業発展と同時に、地域の暮らし・環境の質を引き上げる
目標(ゴール)をざっくり整理
- 国家競争力の強化
高度技術産業の集積で、アセアン有数の経済圏へ。 - インフラ整備の高度化
交通・物流・公益・通信を連結・効率化してコストと時間を削減。 - 戦略産業の振興
重点分野に投資を呼び込み、産業構造を高付加価値へ転換。 - 生活の質向上
経済と社会・環境の質を両立させ、地域住民の厚生を高める。 - 投資環境の創出
ワンストップサービス、法整備、税制優遇で“やりやすさ”を最大化。 - 持続可能な開発
SEA(戦略的環境アセスメント)/**EIA(環境影響評価)**を義務付け、環境と共生。
どんな産業を育てるの?(ターゲット産業)
高付加価値・将来性のある分野が中心です。
- 次世代自動車(EVなど)
- スマートエレクトロニクス
- 医療ハブ/メディカル&ウェルネスツーリズム
- 航空産業
- デジタル産業
- バイオテクノロジー
- 加えて、食品加工・ロボット・高度農業・バイオ燃料・環境配慮型ケミカル・防衛関連 なども対象に含まれます。
実際に何を整備するの?(インフラ&制度)
ハード面(例)
- 空港・港湾・高速鉄道など、製造・観光・MRO(整備)を支える基盤
- 物流・通信・公益事業の高度化による、安定供給と低コスト化
ソフト面(制度・運用)
- ワンストップサービス(One Stop Service)
許認可・各種手続きを一元化し、速い・分かりやすい・確実を実現。 - 税制優遇・関税優遇
企業所得税の免除・減税、機械・原材料の輸入関税免除など。 - 土地利用の特例
事業に必要な所有・賃借のしやすさを高める仕組み。 - ビザ・労働許可の迅速化
外国人専門人材の受け入れをスムーズに。 - **東部経済回廊法(EEC Act B.E. 2561/2018)**に基づくルール整備
投資促進、土地利用、手続きの透明性・予見可能性を確保。 - EEC開発基金
インフラ・人材育成など優先プロジェクトに資金支援。
誰が運営しているの?(ガバナンス)
- 国家東部経済回廊政策委員会
首相が委員長。副首相や財務・外務・観光・交通・産業・デジタル・エネルギー・環境などの各大臣が参加。
役割:政策策定、計画承認、各省庁との調整、進捗監督、課題解決。 - EEC事務局(EEC Office)
上記委員会の方針に沿って実行部隊として投資家支援・計画実施・関係機関連携を担当。
投資家・事業者のメリット(例)
- スピード:ワンストップ手続きで意思決定から稼働までが早い
- コスト:税制・関税優遇、物流効率化で総コストを抑制
- 人材:重点産業向けの教育・訓練プログラムで即戦力を確保
- 拠点性:空港・港湾・鉄道の結節点に近く、輸出入・観光・MROに有利
- 予見可能性:EEC法に基づく制度設計で、中長期の計画が立てやすい
環境と社会への配慮
EECでは、SEA/EIAの実施が義務。
計画段階から環境・社会影響を精査し、緩和策を組み込むことで、**“成長と持続可能性の両立”**をめざします。
こんな人・企業に向いています
- 製造・テック企業:EV、電子、デジタル、バイオ等のグロース投資
- 航空・物流:MROやハブ型物流の最適立地を探す企業
- ヘルスケア・観光:医療・ウェルネス観光の複合開発
- 人材・教育:産学連携・職業訓練のスキームづくり
- サプライヤー:重点産業の**周辺需要(部材・装置・サービス)**を狙う
よくある誤解と正しい理解
- 誤解①:工業団地の拡張でしょ?
→ 産業高度化+インフラ+人材+制度+環境を包括した国家プロジェクトです。 - 誤解②:外資だけ優遇される
→ 国内外の投資を対象に、明確な要件に沿ってインセンティブを付与。 - 誤解③:環境は二の次
→ SEA/EIAが義務。計画段階から環境・社会配慮を組み込む設計です。
はじめ方チェックリスト
- 対象産業との適合性:自社の技術・製品がターゲット産業に合致するか
- サプライチェーン設計:港・空港・鉄道と拠点配置の相性を検証
- 優遇適用の要件確認:税・関税・用地・人材スキームの適格性を確認
- 手続きフローの把握:ワンストップサービスでの必要書類・期間・条件
- ESG要件の準備:SEA/EIAに関わる体制・データ・パートナー整備
- 人材戦略:現地採用・研修・専門家ビザの計画
- リスク評価:政策要件の変更余地、為替・金利、供給網の冗長化
用語ミニ解説
- EEC(Eastern Economic Corridor):東部経済回廊。チョンブリー・ラヨーン・チャチューンサオの3県を核にした国家開発プロジェクト。
- OSS(One Stop Service):投資・許認可手続きの一元窓口。
- SEA / EIA:戦略的環境アセスメント/環境影響評価。計画・事業の段階で環境・社会影響を評価し、回避・低減策を講じる枠組み。
- EEC Act(B.E.2561/2018):EECの法的根拠となる法律。
まとめ:EECをひとことで
「産業の未来をつくる“場所”であり“仕組み”」。
EECは、拠点性の高い3県にハードとソフトを同時投入し、高度産業×インフラ×人材×環境をパッケージで前進させる国家プロジェクトです。投資家・事業者にとっては、「スピード・コスト・予見可能性」の面で大きな優位性が期待できます。
参考Q&A(超要約)
- 地域の名前は? → 東部経済回廊(EEC)
- いくつの県で構成? → 3県(チョンブリー/ラヨーン/チャチューンサオ)
- 主な目標は? → 競争力強化、インフラ高度化、産業振興、生活の質向上、投資環境整備、持続可能性の確保
出典
出典(PDF):https://www.doe.go.th/prd/assets/upload/files/bkk_th/0d8a0e6aecaf8a3f72b3209f54b8dc4e.pdf
このPDFの発行主体(どこの部署?)
- **タイ労働省(Ministry of Labour)**の外局である
**雇用局(Department of Employment、略称 DOE / タイ語:กรมการจัดหางาน)**が公開している資料です。
雇用局は、国内の雇用行政・労働市場情報、外国人就労の手続(ワークパーミット等)を所掌する機関で、労働省の所管下に置かれています。กระทรวงแรงงานdoe.go.th+1 - URLパスの
/bkk_th/
は、バンコク(BKK)関連の雇用局文書に使われるディレクトリで、同ディレクトリ配下の他文書でも**「バンコク雇用オフィス(สำนักงานจัดหางานกรุงเทพมหานคร)」**に関する案内が多数確認できます。今回のPDFも同系統の配置です。doe.go.th+2doe.go.th+2
補足:雇用局(DOE)が労働省の“配下機関”であることは、労働省公式サイトの「หน่วยงานในสังกัด(所管機関)」一覧にも明記されています。กระทรวงแรงงาน
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