🇹🇭 タイ進出のリアル失敗談「マーケティングフィー編」

こんにちは。
今回は、タイで事業を行ううえで見落とされがちなリスクの一つである
「マーケティングフィー*について、実体験をもとに解説いたします。

なお、適法性については個別のケースによるため一概には言えませんが、日本の不動産業界においても、「担ボ」「個人バック」「CB(キャッシュバック)」といった呼び方で、案件紹介の対価として営業担当者にインセンティブが支払われる商習慣が一部に存在することは知られています。

一方で、タイにおいては業界を問わず、こうした商習慣がより広く見られる傾向があります。
実際に、弊社においても本点に関する認識が十分でなかったことから、意思決定に影響が生じた経験があります。

同様のリスクを回避するためにも、本記事の内容が少しでも参考になれば幸いです。


■ マーケティングフィーとは何か

マーケティングフィーとは、簡潔に言えば

購買や取引の意思決定に関与する担当者に対して支払われる、インセンティブ的な費用

を指します。

例えば、ホテル運営においては、

  • アメニティ関連業者
  • リネン業者
  • 清掃・設備関連業者

など、多くのサプライヤーから営業を受けます。

その中で、「当社を採用いただければ〇%のマーケティングフィーをお支払いできます」といった提案がなされるケースがあります。

これは形式上は広告宣伝費の一種とされることもありますが、実態としては、選定プロセスに影響を与えるインセンティブとして機能する場合が少なくありません。


■ どのような問題が生じるのか

この仕組み自体が直ちに違法というわけではありませんが、企業経営の観点からは、以下のようなリスクが生じます。

まず、購買判断が「会社にとって最適かどうか」ではなく、担当者個人の利害に左右される可能性があります。

その結果として、

  • 同等品質にもかかわらず価格が高い業者が選定される
  • 品質が低いにもかかわらず継続的に採用される
  • コスト構造が不透明になる

といった問題が発生しやすくなります。

特に、海外拠点において本社側の関与が限定的な場合、こうした状況が見えにくく、気づいた時には収益性に大きな影響が出ているケースもあります。


■ 実際に起きた事例

弊社においても、品質面に違和感を覚えたことをきっかけに調査を行ったところ、

支払金額の約4分の3が、マーケティングフィーに充てられていた

という事実が判明したことがあります。

この結果からも分かる通り、必ずしも「最も合理的な選択」がなされていたわけではなく、
意思決定が本来の企業利益とは異なる方向に歪められていた可能性があります。

本来であれば、価格・品質・安定供給といった観点で選定されるべきところが、結果としてインセンティブの有無によって左右されていたと考えられます。

このような事象は、特定の企業や個人の問題として片付けるべきものではなく、
現地における商習慣に起因する構造的なリスクとして認識することが重要です。


■ リスクを回避するためのポイント

タイで事業を行う際には、以下の点を意識することでリスク低減が可能です。

① 購買プロセスの可視化と関与

購買を完全に現地任せにするのではなく、重要な取引については本社または責任者が関与する体制を構築することが重要です。

その具体策として、以下のような対応が有効です。

  • 商談には必ず複数名で出席する
  • 音声記録や議事録を作成し、意思決定の過程を可視化する
  • 個人ではなく、代表メールアドレスを通じてやり取りを行う
  • 一定規模以上の信頼性の高い企業との取引に絞る

これらを徹底することで、意思決定の透明性が向上し、不適切な取引や不合理なコストの発生を抑制することが可能となります。


② 複数社比較の徹底(相見積もり)

価格・品質・条件を客観的に比較するためにも、必ず複数社から見積もりを取得することを推奨します。


③ 定期的な見直し

一度決定した取引先についても、定期的に再評価を行うことで、不合理な契約の継続を防ぐことができます。


④アドバイザリー企業の活用

現地の商習慣や取引構造に精通したアドバイザリー企業を活用することは、有効な対策の一つです。

特に、購買や契約に関するプロセスに第三者の視点を取り入れることで、意思決定の透明性を高めるとともに、不合理な取引や不要なコストの発生を未然に防ぐことが可能となります。

例えば、不動産開発など大きな投資を伴う案件においては、業者によっては相場の2倍以上の価格で見積もりが提示されるケースもあるとされています。こうした事象は、情報の非対称性の大きさや、言語の違いによる情報取得の制約などに起因することが少なくありません。

このような環境においては、外部の専門家が関与することで、現地スタッフとの間に適切な牽制関係が生まれます。その結果、アドバイザリー費用を上回るコスト削減につながる可能性もあり、ガバナンスの強化にも寄与します。

したがって、事業パートナーに加えて、独立した第三者の専門家を適切に選定することが、事業の成否を左右する重要な要素となります。


■ まとめ

タイは成長性が高く、多くのビジネスチャンスが存在する市場である一方、日本とは異なる商習慣が存在することも事実です。

マーケティングフィーもその一例であり、

知らないまま事業を進めると、意図せず収益を毀損するリスクがある

という点には十分な注意が必要です。

一方で、こうした構造を理解し、適切な管理体制を整えることで、リスクをコントロールしながら安定した事業運営を実現することも可能です。

今後も、実務で得た知見をもとに「タイ進出におけるリアルな注意点」を発信してまいります。
ご関心のある方は、ぜひ引き続きご覧いただけますと幸いです。

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